みなさんこんにちは、Tekuです。
早速ですが、皆さんは論文・レポートというものを書いたことがありますか?
・大学の課題でレポート提出を求められた
・高校の課題研究で成果発表の論文を書かないといけない
・卒論が…
なんて状況にいる方、まずはこの本を読みましょう。
NHKブックスから出されている、戸田山和久さんの『論文の教室』です。
こちら、とても人気のあるベストセラーで、何度も改訂を重ねるほど多くの人に読まれている一冊です!私が所属している京都大学の研究室でも、指導教員から毎年必ず推薦されている名著です!
それでは、どんなところがいいのか、解説をしていきたいと思います。
がんばれヘタ夫くん!ストーリー仕立ての論文術!
まずは特徴的な文体。論文を書かないといけないことになったけどやり方がさっぱりわからないという某大学工学部の作文ヘタ夫くん(安直なネーミングですね笑)が登場します。
彼は戸田山先生が過去に見てきたヘタな論文・レポートの筆者の要素をこれでもかというほど詰め込んだキャラクターとして描かれ、驚くほど下手です。そりゃもう、びっくりするほど。
あ、安心してください。この本を手に取ろうと思えた時点で、すでに大半の方はヘタ夫くん以上の技量を持っていることと思います。ちゃんと書こうと思っているわけですから。
さて、「理論編」ともいえる第1部では彼のあまりにお粗末な、下手なレポートを見せられるコーナーです。そう聞いただけでも面白い予感がしてなりませんが、本当に笑ってしまうぐらい下手です。どのレベルかというと、高校入試を目指して小論文指導を受ける中学生が「やっちゃいけないよ」と指導される内容をすべて網羅した状態で大学に来てしまったレベルの下手さ加減です。
…わかりにくい?ではこう言い換えましょう。初期のヘタ夫くんのレポートは、論文でもレポートとすら呼べません。書き方を教わっていない小学生の読書感想文か自由作文に毛が生えたようなレベルです。
ちゃんとそこそこの知識は持っている大学生なのに、こんな文章が出来上がってしまう。これは単純に書き方を理解していないからだという話になります。
そこから、どういう点がまずいのかを指摘していくスタイルで論文とはどういうものか?何をどう書いていく必要があるのか?を学んでいくことになります。
この具体的かつ実践的な指導形式を眺める書き方は非常に勉強になります。自分が教えられているような気分にもなりますし、何よりツッコミどころが多すぎて面白い。やはり学びは面白おかしく、楽しくできる方が良いですし、記憶にも残ります。
論文の育て方
さて、第2部以降は「実践編」となります。ここで戸田山先生がメインテーマとされていることは、
論文は書き下ろすものではない。育てていくものだ。
戸田山, 2012, 『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』, NHK出版, p.102.
このごく短い2文に集約されます。では育てていくとはどういうことか?
まずは畑を耕します。土壌が出来上がったら次に種を蒔いて、水をやる。適度に温度や水分を調整しながら肥料なんかも加えてあげるとよいでしょう。害虫や害獣対策も大切ですね。そうして次第に大きく成長した植物が…
長い長い。このくらいでやめにしましょう。こんなふうに育てたところで勝手に文章は完成しません。水やりをしたところでノートがずぶ濡れになり、PCが壊れるだけです。
では論文はどうすれば育てられるのか。それは、「アウトラインを徐々に細かく、深くしていく」ということです。
最初にざっくりとしたアウトラインを作る。そこに調べて分かった情報を加えてちょっと詳しいアウトラインにする。それでも足りない要素を調べたり実験したりして書き加え…
ということを繰り返していくわけです。
何が言いたいかというと、「全体の構造を重視する」ということでしょう。論文は高度に構造化された文章であるため、細かいところばっかり書いていると全体が見えなくなってしまいます。だから常に全体を見ながら、足りないところに書き加えていく形で文章を膨らませていくのです。
これが、戸田山先生が指導する「論文の教室」のスタイルです。
ちなみに続く第3部では、具体的に育てていくうえで重要となる「パラグラフ・ライティング」の手法や、細かくてややこしく、面倒くさくて仕方がない論文のお作法を、とてもわかりやすく、丁寧に教えてくれています。
なお、論文の作法は提出を求める先の提示する書式に従う場合がほとんどなので、各自の状況に応じたもっと細かな作法があります。面倒ですね。
まとめ
さて、ここでは戸田山和久『論文の教室』を紹介してきました。
一見大学生向けかと思いきや、課題研究のレポートを書きたい高校生や、論文形式の文章でプレゼン、論文試験のある入試を目指す方には幅広くおすすめできる一冊です。
なぜなら、とにかく読みやすい!一見すると学術系の書籍ですが、当の戸田山先生が、
私はなるべく多くの方々に読んでいただきたいと念じつつ本書を執筆した。もっとストレートに表現するならば、売らんかなの精神で書いた。
戸田山, 2012, 『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』, NHK出版, p.9.
と書いてしまっているほどです。
ここまでどストレートに書いている方も珍しい。その思い切りが私は大好きです笑。
それゆえに、多くの読者層にとって読みやすい文章となっています。
- これから論理的な文章を書くことが求められる方
- 課題研究レポートの執筆を目前にした高校生の方
- 大学に入学したてでレポート課題を課され、何をどう描いたものかと途方に暮れているそこのあなた
- 卒論が…というそこのあなた
こうした項目に1つでも当てはまった方は、ぜひ1度手に取って読んでみてください。後悔しないこと間違いなしです!